「いちおう、こいつ、コンの参加証は持ってるんだよな。ってことは申し込んでるんだろう? 登録データのほうは、どうなっているんだい?」
桜井の言葉に、某スタッフ氏は参加証の番号を元にして、ミニPCで登録データの検索を始めた。
「会場での参加確認の手続きは、この番号ではまだされてないぜ。
でもって、申し込みの登録個人名は『城戸誠』なってるな。だけど、どうせ偽名だろうと思うよ。身元探しの手がかりにはなら ―― !」
そこでスタッフが絶句する。内緒話のように声を落としてから、彼は桜井に向かって言った。
「ハンドル・ネームが・・・・ケイ・エイ・ディー・アイ、つまり『KADI』になってる・・・・・・」
「『KADI』っていうと、『隻眼のKADI』かい?
おい、冗談だろう?」
驚きに桜井の声が、思わず大きくなる。
スタッフは慌てて周りを見回した。
「名前を騙るただのお調子者かもしれんが、こりゃあ他の参加者に知れたらエライ事になるぞ、きっと(焦」
「う〜ん、恨んでる奴が多いだろうからなぁ・・・・・・でも『駭客神』様かあ。もし本物だったりしたら、僕はちょっと嬉しいけどね」
明るく言ってのけた桜井の様子に、スタッフは首を傾げる。
「『駭客神』さまって・・・・(汗
なんで『さま』が付いちゃうんだよ?
リーイン、お前だって名の売れてるハッカーだろ〜が。
まだ『隻眼のKADI』にやられたことないのかっ??」
「いや、もちろん僕も何度か負けちゃったけどさ。そんなには非道い目に遭わされなかったよ。被害っていっても、再インストールぐらいで済んだし・・・・・・かなり手加減してくれたのかなあ」
のほほんとした表情のままで、桜井がハハハと笑う。
実のところ桜井は、どちらかというと『駭客神』のファンだったりする。彼自身も『ハッカーなんぞ、腕のいい者勝ち』だというのが信条なせいだろう。
「何度か、って ―― ああ、そうか。そういやあ腕の悪い奴とか見苦しい負け方をした奴ほど非道い目に遭ってる、とかいう話だもんな。さすがだね〜」
「そう言われると、照れちゃうよ」
桜井は頭をポリポリと掻いた。
「ま、その話題はこっちおいといて、だな。
とにかく昨日の警察介入だろ? これ以上騒ぎ起こして、コンベンションが途中で中止ってのはホント困るんだよ。
どうせ週末だしさ。病院つれて行くにしても、警察つれて行くにしても、このコンが終わってからにしてくれないかなあ?」
片手で桜井を拝むようにしながら、スタッフの男は言った。
「でもって、差し当たって大会開催中のコイツの面倒はお前が面倒見てろよな。リーイン」
「なぜっ!?!」
「お前に一番なついてる」
言いながらスタッフは、桜井の後ろに隠れるようにしがみついている怯えた男を指さした。
・・続く
2007年06月13日
この記事へのコメント
コメントを書く



