気がつくといつにまにか、懐に潜り込むような格好で寝ているキドッチを持て余し、桜井は枕にされている腕をそっと引き抜いた。
キドッチはうにゃうにゃと何か呟いたが、目は覚まさなかった。
「暑苦しいだろーが。ちゃんと一人で寝ろよ。ったく」
とかなんとか愚痴りながらも、なつかれていることが桜井は嬉しかった。
すでに、二人でいることが日常になってしまっている。
われながら、本当に不思議だった。
「やっぱり、もっと大きな病院できちんと検査してもらおうな」
一人つぶやいた桜井は、すでにヤバイ橋を渡る決心をしていた。
◇ ◇ ◇ ◇
桜井雅宏は、学生である彼にはあまり似つかわしくない、一軒のパブへと入っていった。
当然そこは若者達が大勢集まって、飲んで騒ぐようなタイプの店ではない。しっとりと落ち着いた、どちらかと言えばじっくりと一人で酒を楽しめるような雰囲気の店だった。
時間帯のせいか、ほの暗い店の中には影のような客達がまばらにいるだけだ。桜井はカウンターのスツールに腰を下ろした。
・・続く



