キドッチを連れ去った車のナンバーをたどっていくうちに、やがて西という名前に行き着いた。
有力な官僚の一人だが、謎の多い人物だ。
そのうえ自分について ―― 『リーイン』というハッカーについて調べている奴らがいるらしい、という情報も入ってきている。
例の仕事のせいなのだろうか?
アルゴンソフトへのハッキングが、ばれたのかも知れない。
キドッチはそのせいで連れ去られたのか?
だとすれば、僕の責任だ。
自分は金に目がくらんで、アインとツヴァイの警告も真剣には受け止めていなかった。
考えが甘かったのかも知れない。
そうしてやはり西とアルゴンソフト社は、何か関係があるようだ。だが、そこから先が読めない。
その頼りない情報を頼りに、桜井は行動した。
―― 彼は、アルゴンソフト社を徹底的にマークする事にしたのだ。
しかし、再度ハッキングにトライしようとしたリーインにとって、すでにシステム変更されていたアルゴンソフト社の守りは鉄壁だった。
逆に完璧すぎる程の守りを気付かせぬよう、抜け穴に見せかけたトラップがあちらこちらに仕掛けられているという念の入れようだ。
セキュリティを再構築した人間の陰湿さが目に浮かぶようなシステムだった。
これではたとえ『駭客神』だとしても、侵入は困難だろう。
そう思うと同時に、桜井は疑問を感じた。
桜井が手こずった以前のセキュリティも、かなり高度なものだった。
しかしキドッチは、なんでもないことのように楽々と侵入していた。
桜井も、腕には自身があった。それなのに・・・・・・
僕と彼とで、何が違うというのだろう?
キドッチは、いったい何者なんだ?
結局は訳が分からない、というのが正直なところだった。
桜井は、訳が分からない事を、訳が分からないままにしてはおけない性格だった。
◇ ◇ ◇ ◇
・・続く




