2007年07月19日

駭客神〜The God of Hacker〜29


 仕事に復帰した門倉は、いいようのない空虚な違和感にとらわれていた。
 行方不明だったという期間のことは、どういうわけか全く思い出すことはできなかった。
 何処でどうやって自分が暮らしていたのかすらも、わからなかった。
 本格的に新プロジェクトが動き出し始めている今、以前にも増して忙しく慌ただしい日々が過ぎて行く。だからといって、門倉の気が紛れるわけではなかった。

 そうして新プロジェクトに対する妨害工作は、表面化してはいないが、確実に増えてきている。公になっていない分、その妨害は陰険なものが多かった。
 いくら門倉に特殊能力が有ったとしても、たった一人でどうこうできる類のことではない。

 門倉は苛立っていた。

「ファントム・ソサエティから情報が漏れているのではないか、フィネガン?
 また狙撃などされるのは、ごめんだぞ」
 冷ややかな声で門倉は言い放った。
 フィネガンは気障な仕草で肩を竦めると、まるで開き直るかのように答える。
「私は、貴方の護衛をまかされているだけですからね。
 そのような事までは分かりかねますな。
 ・・・・・・どうやら『リーイン』と称するハッカーが、アルゴンと『次期情報都市計画』について調べてまわっているようではありますが」

「リーイン・・・・・・?」

 その響きが自分の中に生じさせた感情に、門倉は驚いた。
 が、あえて彼は平静を装う。
「その方面については、私の専門だ。
 何とやらいうハッカーの件については、私が自分で調査する。
 フィネガン。
 ファントム・ソサエティには手出ししないでもらおう。
 そのように次官に伝えてくれ」

「わかりました。一応は伝えておきましょう」

 部屋を出ていくフィネガンのことなど、もう門倉の眼中にはなかった。

 リーイン ――
 そのハンドル名は知っている。
 過去に何度か手合わせしたことがある。
 腕の良い本物のハッカーだ。出来合いのツールに頼った、似非ハッカーなどではない。
 だが・・・・・・。
 なぜ、こんなに心が掻き乱されるのだろうか・・・・? 



◇ ◇ ◇ ◇



・・続く
posted by 滝村磨允 at 20:22| Comment(0) | 駭客神 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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