仕事に復帰した門倉は、いいようのない空虚な違和感にとらわれていた。
行方不明だったという期間のことは、どういうわけか全く思い出すことはできなかった。
何処でどうやって自分が暮らしていたのかすらも、わからなかった。
本格的に新プロジェクトが動き出し始めている今、以前にも増して忙しく慌ただしい日々が過ぎて行く。だからといって、門倉の気が紛れるわけではなかった。
そうして新プロジェクトに対する妨害工作は、表面化してはいないが、確実に増えてきている。公になっていない分、その妨害は陰険なものが多かった。
いくら門倉に特殊能力が有ったとしても、たった一人でどうこうできる類のことではない。
門倉は苛立っていた。
「ファントム・ソサエティから情報が漏れているのではないか、フィネガン?
また狙撃などされるのは、ごめんだぞ」
冷ややかな声で門倉は言い放った。
フィネガンは気障な仕草で肩を竦めると、まるで開き直るかのように答える。
「私は、貴方の護衛をまかされているだけですからね。
そのような事までは分かりかねますな。
・・・・・・どうやら『リーイン』と称するハッカーが、アルゴンと『次期情報都市計画』について調べてまわっているようではありますが」
「リーイン・・・・・・?」
その響きが自分の中に生じさせた感情に、門倉は驚いた。
が、あえて彼は平静を装う。
「その方面については、私の専門だ。
何とやらいうハッカーの件については、私が自分で調査する。
フィネガン。
ファントム・ソサエティには手出ししないでもらおう。
そのように次官に伝えてくれ」
「わかりました。一応は伝えておきましょう」
部屋を出ていくフィネガンのことなど、もう門倉の眼中にはなかった。
リーイン ――
そのハンドル名は知っている。
過去に何度か手合わせしたことがある。
腕の良い本物のハッカーだ。出来合いのツールに頼った、似非ハッカーなどではない。
だが・・・・・・。
なぜ、こんなに心が掻き乱されるのだろうか・・・・?
◇ ◇ ◇ ◇
・・続く



