相も変わらず、手がかりは何もない。
広大な展示場の建物を仰ぎ見ながら、桜井は煙草をくゆらせた。
―― でもキドッチがもし元気なら、データショーへ姿を現すかもしれない。
いやきっと来るに違いない。
それが儚い可能性だとは知りつつも、桜井はその事にこだわっていた。
(今更、キドッチを見つけだしてどうするんだ?
もう既に殺されちゃってるかもしれない。
元気でいるなら、向こうから連絡してくるんじゃないか?
でも、忘れてるだけかも知れないだろう?
少しばかり頭の方が弱かったみたいだし・・・・・・
だったら、それこそ、僕を覚えてないキドッチと会って、どうしようってんだい?)
桜井は何度も自問自答した。
意地もある。しかしそれだけではなく、もう一度キドッチに会いたかった。
ただ会いたいだけなんだ。
自分は今まで、誰に対しても執着した事などなかった。それが、正体も知れない一人の男を訳もなく追い求めている。
そうして気付く。
・・・・・・違う、正体がわからないから追っかけるんだ。そうだろう?
「今日はアルゴンソフト社の門倉社長本人が、生身で公の場に姿を現すらしいぜ」
「そりゃぁ、珍しい!
いままで、写真すら公表したことなかったのになあ」
「有名な写真嫌いなんだってさ」
「でもそんなんじゃあ、来たのが本当に本人かどうかわからないよな」
通り過ぎる人々の会話を聞くとも無しに聞きながら、桜井は微かに首をひねった。
なにかが引っかかっている。だが、それがなんなのかがはっきりしない。
◇ ◇ ◇ ◇
・・続く




