2007年07月24日

駭客神〜The God of Hacker〜31


 相も変わらず、手がかりは何もない。
 広大な展示場の建物を仰ぎ見ながら、桜井は煙草をくゆらせた。

  ―― でもキドッチがもし元気なら、データショーへ姿を現すかもしれない。
 いやきっと来るに違いない。

 それが儚い可能性だとは知りつつも、桜井はその事にこだわっていた。

(今更、キドッチを見つけだしてどうするんだ?
 もう既に殺されちゃってるかもしれない。
 元気でいるなら、向こうから連絡してくるんじゃないか? 
 でも、忘れてるだけかも知れないだろう?
 少しばかり頭の方が弱かったみたいだし・・・・・・
 だったら、それこそ、僕を覚えてないキドッチと会って、どうしようってんだい?)

 桜井は何度も自問自答した。
 意地もある。しかしそれだけではなく、もう一度キドッチに会いたかった。

 ただ会いたいだけなんだ。

 自分は今まで、誰に対しても執着した事などなかった。それが、正体も知れない一人の男を訳もなく追い求めている。
 そうして気付く。
 ・・・・・・違う、正体がわからないから追っかけるんだ。そうだろう? 


「今日はアルゴンソフト社の門倉社長本人が、生身で公の場に姿を現すらしいぜ」
「そりゃぁ、珍しい!
 いままで、写真すら公表したことなかったのになあ」
「有名な写真嫌いなんだってさ」
「でもそんなんじゃあ、来たのが本当に本人かどうかわからないよな」
 通り過ぎる人々の会話を聞くとも無しに聞きながら、桜井は微かに首をひねった。
 なにかが引っかかっている。だが、それがなんなのかがはっきりしない。



◇ ◇ ◇ ◇



・・続く
posted by 滝村磨允 at 22:29| Comment(0) | 駭客神 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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